APNGが普及しない2つの理由、2つの望み

Firefox3とOpera9.5以降では、APNGと言うアニメーション画像形式が表示可能です。これはGIF代替を目標にMozilla Foundationが独自に策定したフォーマットでPNGをベースにしています。しかし、いまいち普及に弾みがつきません。その尤もたる理由を2つ述べたいと思います。

APNGが考案された経緯はGIFのライセンス問題に端を発します。かつて、GIF画像の作成に採用されているLZWアルゴリズムの権利保有元が、突然、特許料の徴収を強化し始めました。既にブラウザの標準的画像形式であり、自由に使えていたGIFに降りかかった予想外の事件。この自由を奪う行為に反発した多くの人々が立ち上がり、代替フォーマットを考案したのでした。それが静止画像形式PNGと、アニメーション画像形式MNGです。PNGが一定の成功を収めた一方、残念なことに、MNGは策定の遅れと難解な仕様のため次第に忘れ去られていきました。このMNGの反省点から、再度GIF代替アニメーション形式として発表されたのがAPNGです。しかし、時既に遅し。LZWの特許期間が満了し、GIFを昔のように自由に使える現在、APNGの出る幕はありません。全てのブラウザで表示できないAPNGを誰が使うのでしょうか。

第2に、この新しい画像形式に対応させるために開発リソースを割く価値が薄いこと。APNGは野心的にもフルカラーアニメーションをサポートしていますが、可逆圧縮であるが故にPNGと同様の欠点があります。それは、ファイルサイズが大きくなってしまう、と言うことです。ブロードバンド時代とは言え、無意味に大きなファイルは転送に時間がかかり、閲覧者とサーバ双方のストレスの原因になります。結局、256色以下に減色した画像を使うのが最良の選択。そうなると、わざわざAPNGを使わずともGIFで事足りてしまうのです。しかも、FlashやJavascript全盛の昨今、ブラウザでのアニメーション画像の活用範囲は、非常に限定的ものとなってしまいました。そのような状況で積極的にAPNGをサポートするブラウザが増えるのか、甚だ疑問です。

ですが、普及の望みがない訳でもありません。ブラウザシェア70%のIEがAPNGに対応すれば、一気に普及の道が開けるかもしれません。近頃は他のブラウザにじわじわとシェアを奪われていますが、まだまだ、その存在感は大きいです。IEの動向は要注目です。

また、APNGはGIFと同様、シンプルなフォーマットです。libpngに読み書き用のAPIが実装済みと言うことなので、ブラウザ以外の用途で道が拓ける可能性もあります。ブラウザでの利用に拘らず、ゲームのリソースとして使ってみてもいいかもしれません。興味のある開発者は挑戦してみては如何でしょうか。

以上、MNGアニメーション編集ソフトを開発したことのある筆者の見解でした。