現場猫のポーズ

[PR] KAT loco S、改良版の実力を比較

VR上で足踏み移動と簡易モーションキャプチャーが可能となるKAT loco。その改良版が2020年11月22日、国内は12月16日から販売開始された。今回、どこが改良されたのか、仕様だけでは分からない部分を動画を織り交ぜて比較していく。KAT GatewayのバージョンはVer.1.4.4を使用している。

なお、本記事はKAT VR社 日本総代理店の匠様より提供を受け執筆している。比較対象となる旧KAT locoについては、以下の記事を参照。

目次


仕様比較

旧KAT locoとKAT loco Sの共通仕様は次の通り。公式サイトからの引用だ。

KAT loco / KAT loco S 共通仕様
重量35g
サイズ直径50mm x 高さ24mm
素材ABS樹脂
通信方式Bluetooth 4.2
通信遅延20ms以下
受信機USB2.0以上
バッテリーリチウムイオン蓄電池 370mAh
充電1時間(5V = 0.5A)

形状は旧KAT locoを流用しているため、ほぼ同じ。以下はハードウェア的な変更点。太字はスペック上どちらが優れているかを示している。

KAT loco (旧版)KAT loco S (新版)
折りたたみ式紙箱+プラスチックトレーフタ付補強紙箱+ウレタン材
背面色灰色
LEDライト青白
通信範囲5m3m(実際は5m可)
使用時間10時間(待機150時間/6日半)7時間(待機1200時間/50日)
磁力耐性なしあり
初期補正必要不要
腰センサー精度10~15度刻み2度刻み
足センサー3軸(加速度のみ)6軸(加速度+地磁気)
追加付属品出資者のみ膝バンド添付膝バンド標準添付

通信範囲が旧KAT locoよりも狭くなっている。これは実際に確認してみたところ、5m離れても何ら遅延なくセンサーが反応した。旧KAT locoも以前は公証通信範囲が3mとなっており、いつの間にか公式ページだけ書き換わっていた。そのため、あくまで目安と考えた方が良いだろう。推奨範囲はどちらも受信機から1.5m前後だ。

また、待機時間こそ圧倒的に長くなっているものの、使用時間が短くなっている。これは今回しっかり検証できなかった。1日1~2時間、3日は連続使用できていたので、1回の充電で数日使えるのは間違いない。それよりも、3又ケーブルだと1つだけ充電が中々終わらないのが気になった。


パッケージ内容

KAT loco Sの内容物はこちら。

KAT loco S パッケージ内容
KAT loco S 保証書とお礼状

腰センサー x 1、足センサー x 2、受信機 x 1、データ&充電用microUSB三又ケーブル x 1、レシーバー用USB-A to microUSBケーブル x 1、短ストラップ x 2、長ストラップ x 2、保証書、お礼状。

旧KAT locoからのパッケージ変更点は次の通りだ。

フタ付の頑丈な化粧箱に変わった。また、緩衝材にウレタン素材が使われており、旧版に比べて耐衝撃性、保存性に長けている。反面、センサーががっちりとウレタンに埋没してしまい、なかなか取り出せない。爪が伸びてる人は注意。筆者は指先が滑って爪を欠いてしまった…痛い。

  • ストラップ

太もも用の長ストラップが追加で2本標準添付された。これはKAT loco Sをモーションキャプチャー用のトラッカーとして使用するときに必要。旧版では足首用の短ストラップしか付属しておらず、100円ショップ等で代替品を別途購入する必要があった。

更にストラップ自身も改善されており、KAT loco Sはより伸縮性のあるものが採用されている。旧版はベルクロ、すなわちマジックテープ部がボンドで固定されているだけだ。ベルクロ部は伸縮性が皆無なので、使用しているうち、以下のようにストラップから剥がれてしまう傾向にあった。

旧KAT locoはベルクロが剥がれる

KAT loco S付属の改善版はストラップへ直に植毛されているため、上記のような破損はおこらないだろう。

loco Sのストラップは直植毛

それぞれの長さの比較は以下。

長さ有効長最大長
旧loco短ストラップ2.6cm33cm31cm40cm
loco S短ストラップ3.0cm29cm27cm38cm
旧loco長ストラップ2.6cm47cm45cm56cm
loco S長ストラップ3.0cm53cm50cm73cm

短ストラップが少し短くなり、長ストラップが余裕のある長さになった。有効長は右側のプラ部を除いた長さ、最大長は無理のない範囲で引っ張った時の長さだ。

KAT locoとKAT loco Sのストラップ長さ比較
  • 受信機

接続端子がUSB Type-AからmicroUSBに変更された。センサーの充電端子と統一したのだろう。なぜか底面にネジが1つ増えている。

KAt locoとloco Sの受信機端子
KAt locoとloco Sの受信機底面
  • USBケーブル

長さは1.5mと変わりなし。端子構成がUSB Type-A to Type-Aから、USB Type-A to microUSBに変更。太さも5mmから3mmへ細くなった。以前よりもスリムで柔軟性があり、取り回しがしやすい。USB2.0なので、ノイズの心配も少ない。

  • 腰、足センサー

どのセンサーも背面が黒から灰色へ変更された。旧版との判別を容易にするためだと推測する。また、平らだったLED部がドーム状に盛り上がっており、斜めからでも光を視認しやすいように改善されている。

KAT locoとloco S、センサー裏
KAT locoとloco S、センサーLED部

技適について

旧版同様にKAT loco Sも技適(工事設計認証)を取得している。

KAT locoとloco S、技適は同番号

認証番号は"R 018-190355"。旧KAT locoと同じだ。ハードウェアを変更しているため、番号が変更になるかと思っていたが、どうやら一定条件を満たせば同一認証番号による更新が可能なようだ。総務省による同番用件詳細PDFが公開されている。

同一認証番号とする場合のガイドライン 平成30年2月6日ICCJ電波法関連ガイドラインWG 文書番号:001(第2.2版) (PDF)

ただ、現在は技術基準適合証明等を受けた機器の検索から辿れる情報が、旧版のまま未更新であることは付け加えておきたい。手続きがなされていれば、数ヶ月後に結果が分かるだろう。


簡単セットアップ

初期セットアップ時の負担が大幅に軽減された。キャリブレーション不要!受信機とペアリングするだけ!お手軽簡単セットアップ!なのだ。

旧KAT locoは腰センサーをお手玉したり、木材に挿してグルグル回したりしたり、自らに装着して回転したりせねばならない。挙句、調整に失敗する確率が高かった。以下の旧セットアップ動画を見れば、その苦労が垣間見えるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=7qX3V9AgoJM

KAT loco Sで初回に行うことと言えば、受信機の接続、各センサーのペアリング、この2つだけとなる。旧版の初期キャリブレーション工程はごっそり消えた。

KAT loco Sセットアップ 受信機
KAT loco Sセットアップ 腰センサー
KAT loco Sセットアップ 足センサー

なお、受信機とセンサーをペアリングするまで、各センサーのLEDは光らない。壊れていると思って焦らないように。もし、壊れていると感じたら、KAT Gatewayの"デバイスマネージャ"-"Sensor Recovery"から、ファームウェアの初期化を試して欲しい。

KAT Gateway Sensor Recovery
KAT Gateway Sensor Recovery 詳細

磁気耐性向上

旧KAT locoは腰センサーが磁力の影響を受け、腰が荒ぶることがあった。これには磁石だけでなく電波を発するスマホ、VR用コントローラーも含む。20cm離れた場所からでも、近づけたり離したり、磁界の変化が作用するとウエスト方向の値が乱れた。特に、コントローラーを握ったまま腰センサーのキャリブレーションボタンを押すと、位置がズレたまま初期化されてしまうのが悩みであった。

KAT loco Sは、腰センサーに磁力が働くものをゼロ距離まで近づけても影響しなかった。足センサーも同様だ。


省電力性能向上

センサーの省電力性能が向上している。旧KAT locoもKAT loco Sも受信機と接続していない時は30秒程で、受信機と接続中も5分動きが無いとスリープに入る。この中で腰センサーは省電力性能が目に見えて増した。キャリブレーションボタンを押すまで、幾ら揺すっても起動しないようになっている。プレイ中、スリープから復帰する時にボタンを押す手間が増えてしまったが、持ち運び中はバッテリー消費が抑えられて有難い。


デカップリング能力向上

VR内では通常、顔の正面を前と判定して移動する。それ故に、前進中に横を振り向こうものなら、そちらへ引っ張られる形で移動してしまう。これが酔いの一因にもなっている。この動作を改善するのがデカップリング(独立した頭と体の方向)である。

こちらがVRChatで試した動画だ。首を左右に激しく振っていても、身体は直進していることが背景の動きで確認できるのではないだろうか。

WindowMRでのコントローラー設定は次のようになっている。方向データムは新しく追加された"HMD-Body"を選択している。頭(HMD)の向きに関係なく腰センサー(Body)の方向を基準に進む。

デカップリングの設定はHMD-Body

通常の足踏みでは振動の影響か上手く機能しないこともあるのだが、旧KAT locoの斜めに引っ張られる頻度が軽減した。特にクルーズモードで自動前進しているときの効果は絶大だ。気持ちいいぐらい真っ直ぐ、腰の向いてる方へ進む。


モーションキャプチャー時の滑り軽減

可能な動作は旧KAT locoもKAT loco Sも試した範囲において変わりはない。が、KAT loco Sはハードウェアがアップグレードされ、腰だけでなく足センサーも地磁気が検出出来るようになった。そのおかげか、旧KAT locoに見られた足先が滑る現象が若干抑えられている。如実に違いが現れるのは、もも上げ、ジャンプ、寝る時だ。

もも上げは、まだ揺れはするものの氷上にいるような不自然なプルプル感が少し減った。ジャンプ時は腰が勢いよくずれることが無くなった。

また、寝て横を向いた時に首から下が暴れなくなったことは、KAT locoを"お布団トラッカー"、"寝トラッカー"として使っているユーザーには喜ばしいことかもしれない。とは言え、KAT loco Sでも足が暴れてしまうため、横は向かない方が良いだろう。


アップグレードプログラム

既に旧KAT locoを所有しているならば、アップグレードプログラムを利用して安価にKAT loco Sと交換できる。税込12,000円+送料860円。期間は未定ながら、このハードウェア交換サービスはもろ手を挙げて歓迎したい。

KATlocoアップグレードアッププログラム (KAT VR JAPAN)

上記公式サイトからアップグレードプログラムをカートに追加、備考欄にシリアルナンバーを記入し、決済を済ませる。後は、返送案内通知に沿って旧KAT loco一式を発送するだけだ。シリアルナンバーはKAT Gatewayのデバイスマネージャから確認できる。箱やキャリブレーション用木材を紛失してしまっても何とかなるようだが、使用に必要な物はケーブルも含め全て返送しよう。

念のため旧KAT loco一式をここに示しておく。

旧KAT loco内容物一式(木枠除く)

受信機を繋ぐUSBケーブルの表記は白字で"USB2.0 CABLE AWM STYLE 2725 80℃ 30V VW-1 UGREEN 绿联 www.ugreen.com 143"。生産ロットによって同梱ケーブルが異なるかもしれないので、各自要確認のこと。

旧KAT loco USBケーブル (UGREEN製)

トラブルシューティング

  • VRChatで突然足が1本にまとめられた
  • VRChatで足のトラッカーが消滅した

新旧問わず、静止していると5分でスリープする。復帰後の認識が上手くいっていないのかもしれない。なるべくスリープしないようにしよう。この現象に遭遇したら、VRChatとSteamVRを再起動すれば治る。

  • SteamVR上ではトラッカーとして3つ全て動作しているのに、VRChat上では足が1本足りない

SteamVRで全て認識しているというのは、次のような状態だ。これは正常な動作。

しかし、VRChatに入った途端、足が縛られたように動かなくなる。

この現象は、VRChat起動時に足を肩幅に開いておくと回避できる。足を揃えすぎるとくっついてしまうようだ。VRChat特有の問題だと思われる。

  • 左足センサーが起動時に一瞬自分を右足だと勘違いする

直して!KAT VR社さん!!ユーザーはどうすることもできない。もしかしたら、VRChatで突然片足が動かなくなる要因なのかもしれない。

  • 横移動の方法が1つに減った

旧KAT locoでは、2種類の移動方法が選べる。足を横に1歩出すType Aと、足首を外側にクイッとひねって戻すType Bだ。しかし、KAT loco Sを接続すると、Type-B固定になってしまう。個人的にはType-Aがやりやすかったので復活を望みたい。足をひねって靴下に穴を開けるのは筆者だけでいい。

KAT locoの横移動設定
KAT loco Sの横移動設定
  • KAT Gatewayの表示がlocoとloco Sで切り替わらない

KAT GatewayのUIを終了させて再度立ち上げよう。現在接続している機器に沿った表示に変更される。

  • KAT Gateway起動時にずっと読み込み中

受信機を接続すること。接続してないとKAT Gatewayは永遠に先へ進まない。どうして…。

KAT loco Sセットアップ 受信機未接続
  • 充電しても振ってもLEDが光らない。初期不良?

KAT Gateway上で受信機と各センサーをペアリングするまでは無反応だ。3又ケーブルの灰色端子に繋いで、即セットアップを始めよう。本格的な充電はその後でも良い。また、足センサーの左右が決まるのはセットアップ後となる。出荷時はまだどちらでもない。


まとめ

KAT loco Sは、家庭用の歩行型VR機器として、地味ながらも確実な進化を遂げた改善版だ。歩行に関しては頂点を極めた感さえある。

また、簡易トラッカーの能力も僅かに向上している。依然として3点トラッキングであるため、膝から下の自由が利かず、VIVEトラッカー等と比べると見劣りしてしまう。が、1つ目のVR拡張機器として選択する価値は十分にあると思う。

もし、今後モーションキャプチャー用にVIVEトラッカーを本格導入したとしても、KAT loco Sは歩行用に併用できる。VIVEトラッカー+KAT locoの合わせ技が可能だ。そのため、末永く付き合えるデバイスとなるだろう。

2021年2月現在、日本国内からは正規代理店 株式会社 匠が運営するKAT VR JAPANからのみ購入可能。KAT loco Sは税込価格38,500円。内容物は同じで箱だけ古いデザインのものが在庫限り税込37,400円となっている。通常は送料860円だが、サイトリニューアルキャンペーンで送料無料だ(念のため決済画面で要確認)。

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