動物の表紙でお馴染み、IT技術者のバイブル的存在である米オライリー社(O'Reilly)。インターネット初期よりオープンソース精神に溢れた運営をしており、電子書籍ストアは2011年頃よりDRMフリーをモットーとしていた。DRM、すなわち、所有権管理機能がない状態を指す。サーバールームなど通信が不安定な環境でもオフラインで読み放題。また、自由に他の端末へ複製したり、バックアップを取っておけたのだ。
しかし、本日、久々に覗いてみた米オライリー社からは、その電子書籍ストアが消えていた。メンバーログイン画面には、「2020年3月にDRMフリーの電子書籍、その他教材はダウンロード不能になる」と書かれている。
調べてみたところ、既に2017年7月からDRMフリー本は販売されなくなっていた。
もしかしたら、告知があったのかもしれないが、全く記憶にない。発表当時、その是非をめぐって紛糾したらしい。
- 米オライリーがDRMフリーの電子書籍の販売を停止、サブスクリプション制に移行へ (INTERNET Watch 2017年7月3日)
- We're reinventing, too (O'Reilly Insights 2017年6月29日)
- The mission of spreading the knowledge of innovators continues (O'Reilly Insights 2017年6月30日)
取り扱い中止の理由は端的に言えば"公式サイトで直販するにも維持費がかかるし、電子書籍の販売数も減少しているから"。そして、今後、買い切りの電子書籍はアマゾンKindleに一任し、米オライリー社は併売していた月額制1本に絞ることになった。
しかし、よくよく考えて欲しい。アマゾンのKindle本は専用アプリを通じてしか読むことが出来ない。自由に複製出来るDRMフリーとは程遠いのだ。アマゾンが倒産したり取扱いを中止した場合、アカウントを凍結された時は、永遠に読めなくなる。勿論、お金は戻ってこない。没収されたも同然。 言わば、"アマゾンの電子書籍は期限未定の貸本である"ことに注意されたい。「いつか読もう」と、 購入後に積読しようものなら、いずれサービスごと消滅し金をドブに捨てた状態となる。
その点、DRMフリー電子書籍なら、一般的な読書アプリやブラウザで自由に閲覧できる。10年後、20年後でも、それこそ末永く読めるだろう。今まで米オライリー社が取り組んできたDRMフリー電子書籍は、それだけで価値があったのだ。終了してしまったことが非常に残念でならない。
ちなみにサブスクリプションは月額39ドルからとなる。個人的には高額だと思う。技術書は頻繁に読み漁るものではなく、分からないことがあった時に参照する程度。そういった使い方の場合は、DRMフリーな買い切りが最適ではないだろうか。読みもしないのに毎月お金を取られるのは、消費者目線から見れば愚かである。
なお、日本のオライリー・ジャパン社は2011年5月よりDRMフリー電子書籍を販売しており、こちらは2019年10月現在も継続中だ。だが、いつ取扱い中止してもおかしくはない。欲しい本があったら、少々高値に感じられても今のうちに買っておいた方が良いだろう。
また、私が2012年に買った電子書籍は、2018年になっても丁寧に更新されていた。なので、以前に米オライリー社で電子書籍を購入した人は、2020年3月までに改めてダウンロードし直しておくことを推奨する。むしろ、忘れるといけないので、これを読んだら今すぐダウンロードしよう!!
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